2021.10.24
専務ブログ

世界で一番寒い家⁉

さかの

中小企業の経営者が学ぶ「中小企業家同友会」という団体が全国にあります。
私も島根県中小企業家同友会の出雲支部に所属し、建築とは別に企業の経営について
異業種の経営者の方々と共に学んでおります。

その中小企業家同友会に所属していると『中小企業家しんぶん』という機関紙が
送られてくるのですが、その中の連載記事「エネルギーシフトを考える」の中に
とても気になる見出しがありました。

それは 「世界で一番寒い家の衝撃」

世界で一番寒い家?どこ?もしかして?
と思ったら、その不安は的中しました。

「岩手を含む北東北は世界中で一番寒い家に住んでいます。」

記事の中でドイツのフライブルク市に視察に行った際に担当者から言われた言葉として紹介しています。

さらに「ここは岩手と同じく外気は冬場マイナス十度になりますが、
部屋の中は
無暖房で十六度以下になりません」と続きます。

日本には四季があり夏は40℃近い気温のなる日もあります。
春や秋など、過ごしやすい季節もあり、寒い地域という印象は無いのですが、
冬という季節だけを取り出して考えると決して温暖とは言えない寒い季節があることは確か。
それもヨーロッパの国々とは変わらないくらい寒い時期があり、その割には建物の断熱性能はお粗末。

「世界中で一番寒い家」と言われても仕方ないのかもしれません。


そして何より衝撃を受けるのは

「部屋の中は無暖房で十六度以下になりません。これは人権の問題です。」

という言葉。
暖かい家に住めるかどうかは人権にかかわるというのです。
記事では後半、ヒートショックなどの健康リスクについて少し触れていますが、最後は
エネルギーシフトの問題につながっていきます。

日本では家の断熱性能は省エネにつながる課題となっていますが
脱炭素や省エネの前にそこに住む人の命と健康の観点から考えられるべきものだと私は思います。

世界五大医学雑誌の一つでもある『ランセット』では2015年に世界13か国384都市における7400万人の
死亡データを解析した結果として低気温で死亡した人は高気温で死亡した人の17倍以上いるという
研究結果を発表しています。

また、WHO(世界保健機構)では2018年に寒い季節に健康を守るために冬季の最低室温18℃以上という事、
(小児や高齢者の場合はさらに暖かくすること)を強く勧告しています。
このような流れから先進国では健康の観点で家の断熱をとらえ性能の向上につなげています。

日本の断熱等級最高等級4(UA値0.87)は無暖房での室温はおおむね8℃となります。
ドイツのマイナス10℃でも無暖房で16℃とは大きな差があり、これでは健康を維持できる
室内環境にはなっていません。

今や交通事故による死亡者数は年間3,000人を下回っていますが、ヒートショックによる死亡者数は
厚生労働省の推計によると19,000人と言われています。
なんと交通事故の死亡者数の6倍以上!

その他にも、冬に病気による死亡者数が増える「冬の死亡増加率」という問題もあり、
この冬の死亡増加率は
一番寒い北海道が最も低いという結果が出ています。
ヨーロッパでも北欧フィンランドの冬の死亡増加率は南欧ポルトガルの3分の1という
研究結果もあり、寒さにしっかりと対策が取られている家に住んでいる
国や地域が
冬の死亡増加率を抑えることができていると言えます。

我慢できる寒さの状態が健康や命を脅かしているのは明らか。

国の省エネ基準から見た断熱性能の家は決して暖かい家とは言えません。

大切な家族を守るためにも、省エネではなく命と健康の観点で断熱を考えていくことが必要ではないでしょうか。